労災保険と通勤災害
こんにちは。本日は労災保険と通勤災害について説明します。
一般的な法律相談に対する回答・説明になります。また、行政書士が業務として相談に応じられない場合もあることをご了承下さい。
◎質問 自転車通勤中の事故なのですが、会社の規定では自転車通勤は禁止されております。労災保険は使えるのでしょうか?また、こちらの過失がゼロの場合に労災保険を使うメリットはあるのでしょうか?
1.通勤災害の労災保険適用基準
・交通事故の場合であっても、業務関連性が認められる限り労災保険を利用することができます。したがって、原則として通勤の際に起きた交通事故の場合でも労災保険を利用することはできます。なお、被害者の通勤方法が、会社の規定に反するものであっても、合理的な通勤方法だと認められる限りは業務関連性が肯定され労災保険を利用することができます。規定違反が直ちに労災保険適用を否定することにはなりません。
2.労災保険利用のメリット
・労災保険が使えることで、以下のような様々なメリットがありますので、労災保険利用を考えてみるべき場合もあります。
1)過失相殺される場合
・積極損害を補填する趣旨で支払われる労災保険金は積極損害のみに、消極損害を補填する趣旨で支払われる労災保険金は消極損害のみに充当されるという性質上(費目拘束)、労災保険金は、被害者側に過失相殺されるべき落ち度がある場合には利用価値が高いといえます。例えば、被害者は自己過失部分に相当する治療費について負担せずに済みます。
2)保険会社の対応に左右されない
・労災保険を使えることで、治療費や休業損害の先行払いに賠償保険会社が応じないようなときでも治療を受けやすくなります。ただし、あまり長期の治療や休業をしていると、結局示談の際に期間の相当性を争点化されるリスクもありますので、十分な考慮が必要となります。
3)特別支給金
・被害者に過失相殺されるべき落ち度がない場合には、理屈としては賠償保険会社から全損害の補填を受けることができるので労災保険利用のメリットはないように思えますが、特別支給金を受領できるという点でメリットがあります。特別支給金は損益相殺の対象とならないため、全損害を賠償保険会社から受領した被害者でも受領することができるからです。
4)アフターケア制度
・賠償論では、症状固定後の治療は原則として認められませんが、労災保険のアフターケア制度を用いて治療を継続することができる場合もありますので、アフターケア制度についても頭に入れておくとよいでしょう。
※ポイント
◇通勤災害の場合に労災保険が使えるかは具体的状況によります。
◇会社の規定で禁止されていた自転車通勤中であることのみでは労災保険不適応とはなりません。
◇被害者に過失がない場合にも労災保険を使うメリットはあります。
本日はここまでとします。次回、交渉による債権回収に続きます。
またのご訪問お待ちしております。
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