危急時遺言の効力発生要件~船舶遭難者遺言と隔絶地遺言
こんにちは。本日は、危急時遺言の効力発生要件について説明します。
◎一般危急時遺言の効力発生要件
・一般危急時遺言は、遺言の日から20日以内に証人の1人又は利害関係人が家庭裁判所に請求して確認を得なければ効力が生じません。これは、遺言が遺言者の真意に基づくものであるか否かを判断するためであります。遺言者の真意につき家庭裁判所が得るべき心証の程度は確信の程度に及ぶ必要はなく、一応遺言者の真意に適うと判断せれる程度の緩和された心証で足りると解されております。なお、管轄裁判所は、相続開始地及び遺言者の住所地の家庭裁判所になります。
◎船舶遭難者遺言
・船舶が遭難した場合で、その船舶中にあって死亡の危険が迫った者は、船舶という限られた状況下にあり、証人を確保することが困難であると考えられるため、一般危急時遺言よりもさらに緩和された要件のもとに遺言をすることができます。すなわち、証人については2人以上の立合いで足り、しかも、口頭で遺言をすれば足り、その場で筆記及び読み聞かせは不要であります。遺言の趣旨の筆記及び各証人の署名押印は、後日別の日にすることができます。なお、証人の中に署名又は押印をすることができない者がいる場合には、署名押印できない事由を付記することが必要とされております。
◎隔絶地遺言
1.伝染病隔離者遺言
・伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にいる者は、警察官1人及び証人1人以上の立合いをもって遺言書を作成することができます。条文の文言上は伝染病のためと規定されていますが、これに限らず地震等によって交通が遮断されている場合にも本条による遺言ができると解されております。遺言者及び立会人並びに証人が署名押印することが必要となりますが、署名押印することができない場合には、その事由を付記することとなります。なお、遺言者が普通方式の遺言をすることができるようになってから6か月生存するときは遺言の効力が失われます。
2.在船者遺言
・船舶の中にいる者は、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立合いをもって遺言書を作成することができます。遺言者が普通方式の遺言をすることができるようになってから6か月生存するときは遺言の効力が失われます。
※ちょっとアドバイス
・危急時遺言の場合は、遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に確認を求めないと効力が生じないとされておりますので、忘れないように注意することが必要であります。
※参考判例
◇証人である医者が3名立合いのもと、その1名が、あらかじめ弁護士が作成した遺言の草案を読み上げて、遺言者がその都度うなずきながら「はい」と返答し、最後に再確認をされ「よくわかりました。よろしくお願いします。」と了承する旨を答えた場合、遺言の趣旨の口授があったとした事例。
◇公正証書遺言における公証人に対する口授について、遺言者が事前に公証人に対して遺言の内容を説明しておらず、当日モルヒネ注射を受けて意識レベルが低下している状態にあり、公証人の問いかけに声を出してうなずくのみであったことから、遺言の趣旨の口授がなかったとした事例。
本日はここまでとします。次回、臨終の際に作成する遺言の要件に続きます。
またのご訪問お待ちしております。
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