遺留分減殺請求権の行使
こんにちは。
青森県弘前市の行政書士、香取です。
本日は、遺留分減殺請求権の行使について説明します。
一般的な法律相談に対する回答・解説になります。また、行政書士が業務として相談に応じられない場合があることをご了承ください。
◎遺留分を求めても話し合いに応じて貰えません。どのような手続をとることができ、またその結果どうなりますか。
※私の父がこの度亡くなりましたが、父は遺言を残しており、母にすべての財産(土地建物5,000万円相当、預金4,000万円)を残しました。また、兄には10年前に事業の援助資金として3,000万円を渡していました。ところが、私には特に何の財産も残してくれませんでした。私は、母や兄に何か請求できないでしょうか。
1.遺留分減殺請求権の行使
(1)手続上の処理手順
・遺留分減殺請求権の行使は、意思表示で足り、必ずしも裁判上の請求による必要はありません(形成権説)。もっとも、相手が話合いに応じない場合、請求内容について合意することが困難な場合等には、裁判上の請求を行うことになります。いずれにせよ、遺留分減殺請求権には、相続開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間という短期消滅時効が規定されていることに注意が必要です。また、遺留分をめぐる事件は、調停前置主義となっています。
・処理手順の大まかな流れは、次のようになります。
①配達証明付内容証明郵便等により請求(応答なし・合意できず) → ②家庭裁判所に対し調停申立て(不調) → ③地方裁判所又は簡易裁判所に対し民事訴訟の提起
(2)遺留分減殺請求権行使の順序
・民法1033条は、「贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。」とし、まず遺贈に対して減殺請求した後で、それでも不足があれば贈与に対して減殺請求するとしています。
・「相続させる」旨の遺言は遺贈と同様に解され、死因贈与は、生前贈与より先に減殺の対象になります。また、遺贈と相続分の指定との間では順序を区別しないのが通説とされています。これらが複数ある場合には、遺贈等の割合に応じて減殺されることになります。
・同順位の贈与が複数ある場合には、新しい贈与から古い贈与へ遡って順次減殺請求の対象とします。
2.遺留分減殺請求権行使の効果
・判例は、遺留分減殺請求権を行使することによって、遺留分を侵害する限度で贈与及び遺贈の効力は失効し、受贈者及び受遺者が取得した権利がその限度で遺留分権利者に復帰するとしています(物権的効果説)。また、返還義務者は、現物返還に代えて価格弁償をすることも可能です。
3.本件相談における処理
・本件相談では、母に対する遺贈と兄に対する贈与があり、贈与より先に遺贈に対する請求を行うことになっていることから、まず母に対する遺贈について減殺請求することになります。
・なお、遺贈につき母に対する給付が完了していなければ、母に返還義務は生じません。ここでは給付が完了しているとの前提です。
◇ポイント
※遺留分減殺請求権は裁判外でも請求可能。
※相手の応答がない場合や合意に至らない場合は調停・訴訟へと進む。
本日はここまでとします。次回に続きます。
またのご訪問お待ちしております。
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