遺言書~押印の場所・契印の要否
こんにちは。本日は、遺言書 押印の場所・契印の要否について説明します。
◎押印の場所
・押印の場所については、署名の下になされるのが通常ですが、遺言書本文の入れられた封筒の封じ目にされた押印をもって、押印の要件に欠けるところはないとした事例があります。
・一方、遺言内容の書かれたカレンダーの裏面(文書)と封筒からなる遺言書について、文章には被相続人の署名及び押印のいずれもない一方、封筒には表に「遺言書」の記載、裏面に遺言者の氏名及び封じ目に「封」との記載、遺言者の苗字の印影がある事案において、「文章と封筒が一体のものとして作成されたと認めることができるのであれば」遺言を自筆証書遺言として有効なものと認め得る余地があるが、当該遺言においては文章と封筒の一体性を否定し、自筆証書遺言の方式を欠くものとして無効とした事例があります。そのため、遺言を記載した文章に署名をし、その下に押印をする方が確実であるといえます。
◎契印の要否
・遺言書が数葉に渡る場合、その間に契印・編綴がなくてもその内容・外面等から見て1通の遺言書であることが確認できる限り、遺言書は無効となりません。
◎他人による押印の効果
・民法968条1項は「遺言者が」「これに印を押さなければならない」としている以上、原則として遺言者自らが押印しなけらばならず、遺言者と無関係に他人が押印した遺言は無効であると考えられます。
・もっとも、必ずしも遺言者が常に押印しなけらばならないというものではなく、判例は遺言者の依頼により病床のそばにいた者が、遺言者の面前で押印した場合について有効であるとしています。また、遺言者がAに押印を欠く遺言書を交付し、かつ、Bに預けてある実印の返還を受けて遺言書に押印するように指示し、AがBから実印の返還を受けて遺言者の指示どおりに遺言書に押捺した場合も、遺言者の特定及び遺言意思の確認に欠けるところがないとして、押印を有効とした事例があります。
・このように遺言者の特定及び遺言意思の確認に問題がない場合、他人による押印を有効とした判例もありますが、遺言者のの特定及び遺言意思の確認がされれば他人による押印で足りるとすることも、疑問も残るところであります。事情を個別に判断して遺言者自身による押印と同様といえるような場合、例外的に有効となるものと考えられます。遺言者の手による押印が原則である以上、特段の事情がある場合を除き、遺言者による押印を行うのが確実な方法であると考えられます。
◇ちょっとアドバイス
□署名・押印については、これを緩和してとらえる判例も存在しますが、遺言の厳格な要式行為性からすると、遺言者自身によって署名押印をなした方が、間違いがないことは言うまでもありません。署名押印等の要式面で間違いがないようにするには、公正証書遺言にする方がより確実といえます。
本日はここまでとします。次回、遺言書の日付の記載方法に続きます。
またのご訪問お待ちしております。
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