業務命令・懲戒処分を行う際の注意点とは~業務命令として行うことができる範囲内か?
こんにちは。本日は、業務命令・懲戒処分を行う際の注意点について説明します。
一般的な法律相談に対する回答・解説になります。また、行政書士が業務として相談に応じられない場合もあることをご了承下さい。
◎業務命令権とその限界
・労働者と労働契約を締結した使用者は、業務の遂行全般について労働者に対して必要な指示・命令を発することができ、これを業務命令権といいます。
・この業務命令が労働契約の合理的な規定に基づく相当な命令である限り、労働者は、その命令に従う義務があるとされております。
・もっとも、仮に就業規則等に規定がある場合でも、労働者に対して著しい不利益を与えるような場合には、業務命令権の逸脱・濫用になる場合があります。
・したがって、まず会社としては、上司の指示が労働契約の合理的な規定に基づく相当な命令であるといえるかを検討し、次に、具体的な上司の命令が業務命令の逸脱・濫用に当たらないかを検討する必要があります。
・また、労働者が業務命令としての指示に従わない場合も直ちに懲戒処分を行うのではなく、まず指導や注意を行うという手順を踏むのが一般的であります。
◎懲戒権の行使
1)懲戒処分の意義
・労働者が適法な業務命令に従わない場合には、使用者は懲戒権を行使することが考えられます。労働者は使用者と労働契約を締結したことにより企業秩序を遵守する義務を負うため、使用者は労働者の違反行為に対して制裁として懲戒処分を課すことができます。
2)就業規則の根拠と懲戒処分の種類
・このように、懲戒処分は労働者に対する制裁の意味がありますので、懲戒処分はその種類及び程度に関する事項を就業規則に記載すべきとされております(労基89九)。
・一般的に会社で規定されている懲戒処分の種類は、軽いものから、戒告、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などがあります。
3)懲戒処分を有効に行うには
・懲戒処分は使用者による労働者への制裁の意義を有するという点で、刑事処分に類似しております。そのため、懲戒処分を有効に行うためには、以下の点に注意することが必要であります。
①根拠規定があること
②具体的行為が懲戒事由に該当すること
③懲戒事由と懲戒処分の重さが均衡していること
④他の同一・同種事案における処分と均衡していること
⑤懲戒手続が適正に行われること(手続の適正)
4)具体的事例への対処
・会社としては、まず当該行為が懲戒事由に該当するかを就業規則に照らして判断します。該当する場合、具体的事例に即して、過去の会社での処分内容などにも照らし、いかなる処分が妥当なのかを検討し、適当な処分を選択します。その上で、告知・聴聞の機会を付与するなど適正な手続を経て、最終的に処分することになります。
※ポイント
◇上司の指示が業務命令として行うことができる範囲内か確認すること。
◇業務命令としての指示に従わない従業員には指導や注意を行うこと。
◇指導・注意に従わない場合には懲戒処分を行うことも検討。
本日はここまでとします。次回、セクハラ・パワハラの法的責任に続きます。
またのご訪問お待ちしております。
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