農地の共同相続人~許可を得ずに譲渡について
こんにちは。
青森県弘前市の行政書士、香取です。
本日は、共同相続人間で相続分を譲渡できるか?について説明します。
◎質問
・相続人は子供のみ5人です。私は遠くに居住しており遺産を相続するつもりはありませんが、訳があるため、私の相続分は農地法上の許可等を得ずに、長男に譲渡できますか?
◎解説
・本ケースは相続人が5人ですので、1人当たりの法定相続分は5分の1になります。この法定相続分は遺産分割前に他の相続人あるいは第三者に譲渡することが可能です。
・そして、譲渡してしまうと、相続分がなくなることから遺産分割協議に加わることはできなくなります。
・相続放棄手続をとると、同様に遺産分割協議に関係がなくなりますが、相続放棄は初めから相続人ではないという効果が生じる点で、相続人であることを前提とする相続分譲渡とは違います。また、相続放棄をすると相続人ではなくなるのですから、他の相続人の法定相続分が増えることになります(本ケースでは1人5分の1の法定相続分が、1人4分の1の法定相続分になります。)。しかし、相続分の譲渡は譲受人に譲渡人の法定相続分が譲渡されることで、長男の法定相続分が5分の2ということになります。
・そこで、相続分の譲渡は農地法の許可等の対象についてですが、裁判所の考え方は共同相続人間での相続分の譲渡の場合には農地法上の許可等は不要という考え方を採用しています。
◇共同相続する農地の法定相続分を農地法の許可等を得ずに第三者に譲渡できるか?
◎質問
・相続人は子供のみ3人です。長男は農地を耕作しているのですが、遺産分割協議前にその農地に関する私(二男)の法定相続分を農地法の許可等を得ずに第三者に譲渡できますか?
◎解説
・遺産分割協議の成立前ですから、農地については相続人3人が3分の1ずつ共有していることになります。そして、この3分の1の持分については、第三者に譲渡することが可能です。
・ただし、第三者は相続人ではありませんから、農地法の許可等がなければ、その持分の譲渡は認められないことになります。
・問題は、仮に農地法の許可等が認められた場合ですが、その農地は2人の相続人と第三者との共有という状態になります。
・この場合、その農地を3人で分けるに当たっては、農地は遺産であることから遺産分割手続によるのか、それとも第三者の共有持分があることから共有物分割手続によるのかの問題があります。
・このことについて裁判所は、民法258条の共有物分割手続によって共有物の分割を図るべきであるとしています。
・遺産分割ですと家庭裁判所の判断ですが、共有分割ですと地方裁判所の判断ということになります。
・共有持分は譲渡が可能で、農地法の許可等があれば、遺産に第三者の権利が入ってくるということになります。そうなると、対象物件の処理が面倒なこととなってしまうことが予想されます。
・とこらが、遺産について遺言があれば、相続人が共有持分を譲渡しても遺言が優先するとされています。そうすれば、相続に関係ない第三者の関与も否定できます。
・こういう点からも、遺言が大切ということがいえるでしょう。
◆香取行政書士から一言
〇遺言書はまだまだ一般的ではありませんが、あなたが亡くなった後にあなたの意思を実現する方法であると考えます。相続人間でもめ事がないように、また、相続がスムーズに出来るように、あなたの意思を遺言書として残すことはとても大事で大切なことだと考えます。
本日はここまでとします。次回に続きます。
またのご訪問お待ちしております。
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