遺言書の押印の要否・方法~押印を欠いても遺言は有効?花押は?
こんにちは。本日は、遺言書の押印の要否・方法等について説明します。
◎押印の要否・方法等
1.押印の要否
・押印の要否に関し、例えばクレジットカードにおいて署名のみで足りるとされているなど署名のみで事足りる場面が増えた社会の動向からすると、常に押印を必要とすることは妥当でないとして、立法論的には押印を不要とし、解釈論的にも押印の要件を緩和して解釈すべきであるとする意見もあります。
・しかし、押印を不要とすることは民法の明文に反するもので、押印を欠く遺言書を有効とすることは原則としてできないものと考えられます。また、昨今、逆に本人確認の重要性が指摘されるようになっている社会情勢からすると、押印を直ちに不要とすることは妥当でないように思われます。
・判例は、遺言者が遺言書作成の約1年9か月前に日本に帰化したロシア人であり、長年日本に居住するも、主としてロシア語又は英語を使用し、日本語は片言を話すに過ぎず、印章を使用するのは官庁に提出する書類等特に相手方から押印を要求されるものに限られていた等の事情がある事案において、自筆証書遺言に署名のみ記載し押印を欠く遺言書を有効としたことがあります。しかしながら、上記判例は特殊な事情の元に認めた判例であって一般的に押印を不要とした判例ではないと考えられます。現に、署名と、片仮名を崩したサイン様なもの、「も」を〇で囲ったもの(以下「本件サイン等」といいます。)が青色の筆記具で記載されているものの押印はない事案で、「いまだ我が国においては、重要な文章について、押印に代えて本件サイン等のような略語を記載することによって文章の作成を完結させるという慣行や法意識が定着しているとは認められない。として、遺言書に「押印」がなく無効とした事例があります。
2.押印の種類
1)印鑑の種類
・使用される印鑑は、実印でも認印でも構いません。
2)押印の可否
・押印が指印で足りるかという点については、争いがありましたが、最高裁判所は、「押印としては、遺言者が印章に代えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺することをもって足りるとするのが相当である」として、指印で足りることを認めました。その理由として、最高裁判所は、押印について指印をもって足りると解したとしても、自筆証書遺言において遺言者の真意の担保にかけるとはいえないこと、実印による押印が要件とされていない文章については、通常指印があれば押印があるのと同等の意義を認めている我が国の慣行ないし法意識があること、指印については本人の指印であるか印影の対照によって確認することはできないが、それは印章による押印であっても印影の対照のみによっては遺言者本人の押印であると確認し得ない場合があり、印影の対照以外の方法によっても遺言者本人の押印であることを立証し得る場合は少なくないこと、を挙げております。
・よって、押印が指印であっても、遺言は無効となりません。もっとも、判例は自筆証書遺言の事例でありすべての方式の遺言書に当てはまるか必ずしも明らかとなっていないことや、本来は印鑑による押印を要求するのが法の趣旨と考えられることからすると、印鑑による押印をするのが無難であると考えられます。
3)花押の可否
・押印が花押で足りるかという点についても、争いがあります。押印がなく、署名と花押が記されていた遺言について、被相続人がこれまでも花押を使用してきたこと、花押は印鑑よりも偽造が困難であることから、花押も「押印」として遺言を有効とした事例もありましたが、その上告審は、我が国には「印章による押印に代えて花押を書くことによって文章を完成させるという慣行ないし法意識」はないとの理由から、花押を書くことは印章にょる押印と同視することはできず、押印の要件を満たさない、と判示しました。
本日はここまでとします。次回、遺言書 押印の場所、契印の要否に続きます。
またのご訪問お待ちしております。
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