割増賃金の請求に関する法律相談~タイムカードの開示請求
こんにちは。本日は、割増賃金の請求に関して説明します。
一般的な法律相談に対する回答・解説になります。また、行政書士が業務として相談に応じられない場合があることをご了承下さい。
1.労働時間に関する証拠
・割増賃金を請求するには、労働者側において、時間外労働等の事実を主張立証する必要があります。実務上は、労働時間の始期と終期を主張立証することにより、その間の時間が労働時間と判断されます。そのため、労働時間の始期と終期を明らかにする資料を収集する必要があります。
・労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインにより、使用者側には、勤務時間の管理、労働時間の記録に関する書類を、労働基準法109条に基づき3年間保存することが要請されております。
・最も有力な資料はタイムカードでありますが、タイムカードがない場合には、職場の入っているビルの入館・退館時間に関する資料、パソコンのログイン・ログオフ時間、業務日誌、交通系ICカードの履歴(改札を通った時間の履歴)等も証拠となり得ます。何もなければ、自ら毎日の始業終業時間をメモしたものも証拠になり得ますが、前記に比べれば証拠の信用性は劣るといえるでしょう。
2.タイムカードの開示請求
・タイムカードの打刻時間は、労働時間を主張立証する上で最も有力な証拠といえます。労働者側は、タイムカードにより勤務管理が行われている職場であれば、手元にタイムカード(又はその写し)がない場合、まずは使用者側にタイムカードの開示を求めるべきであります。実務上は、未払賃金請求権の時効の進行を止めるための請求をするとともに、タイムカードや就業規則等、労働時間に関する資料の開示を求めるのが一般的かと思われます。
・仮に、使用者がタイムカードの開示請求に応じなくとも、労働者は、訴え提起前の証拠収集処分等、証拠保全、文章提出命令によってタイムカードの取得が可能であります(もっとも、前二者については、これらに応じなくても相手方は制裁を受けないことから、実務上はあまり利用されていないようであります。)。特に、文章提出命令は、命令を拒否した場合、労働時間についての事実に関する主張が真実と認められてしまうおそれがあります。
・また、立証責任の観点以外にも、使用者の開示義務を認め、タイムカードの開示請求に対する拒否が不法行為になると判断した裁判例や、付加金を判断する上で不利益な事実として評価されるおそれもあります。
・前記の事情を考慮すると、労働者からのタイムカードの開示請求については、任意開示に応じるべきであると考えられます。
※ポイント
◇割増賃金の請求はタイムカード、日報等により立証する。
◇労働者からのタイムカードの開示請求には任意開示に応じるべき。
本日はここまでとします。次回、割増賃金に関する争点に続きます。
またのご訪問お待ちしております。
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